復刻堂の古雑誌・古本紹介

明治から昭和20年代までの雑誌を集めています。

「戦争保険・本土空襲予想済み?」月刊中日 通巻第58号昭和十八年六月発行

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月刊中日第49號 昭和18年6月1日発行 中部日本出版社発行所

紹介するのは昭和18年6月に発刊された「月刊日中」。西暦になおすと1943年になります。戦争終結が昭和20年8月15日と2年前の時期ですから、てっきり本土空襲で街中が大変な状況になっているのかと想像していたのですが、雑誌を読んでいくと「あれ?まだまだ町は平和そう。でもひしひしと戦争の火が身近になってきている」と思う内容が多く描かれていました。

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まず1ページ目を見ると、名古屋市團報道部主任陸軍大佐長谷川光次氏による「敵愾心の高揚」が冒頭にあります。陸軍の報道部なので戦争のために国民の士気をあげたい内容になっています。

ガダルカナル島でどれだけアメリカが非人道的な行為をしてきたか、戦争に負けると兵士だけではなく、女・子供関係なく酷いことになると煽っています。ただし、戦況については「大東亜戦争は喰うか食われるかの深刻な戦である。」と書いてあるので、明確には断言しないながらも危機感を醸し出しているように感じられます。

ガダルカナル島のことを深掘りしませんが、悲惨になったのは日本軍のアメリカ軍との戦力差。部隊輸送・物資補給が全然だめになり孤立したせいなのと、降参することが選択肢にないから悲惨になったように思うんですけどね。

ガダルカナル島の戦い - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%80%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%AB%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%80%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%AB%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84

本当に保険金を支払っていた戦争保険

戦争保険を聞いたことありましたか?私は全然知らなかった。まずは戦争保険の概要です。

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・鉄器の爆撃、墜落とか戦闘に関する火災や類焼。消防または避難のために必要な損壊が対象。
・火災保険をすでにかけているものなら何でも対象。火災保険がついてなくても建物や付帯設備、汽車や電車、自動車、船舶など大蔵大臣が指定したものなら加入できるが時価の説明書や鑑定書が必要。
・保険の支払額は時価の9割まで。
・保険料は建物や家財の場合は保険金額千円について6ヵ月間で3円。

調べてみると1943年の1000円は現在の貨幣価値になおすと約324万円。3円は9,747円となるので、失礼ながら掛け金に対しての保険金の割合はいいなーと思ってしまいました。ただ、戦後は急激なインフレになるので戦後に保険金をもらっても雀の涙といったところでしょうか。

この保険を見たとき「これ戦況が悪くなったら何やかんやと保険加入者にいちゃもんをつけて実際は支払われていなかったのでは?」です。実際がどうだったのか気になったので色々と検索してみたらありました。NHKの番組で宮沢 喜一さん(元内閣総理大臣)が当時は大蔵省にいたようで戦争保険に関して話をしている映像がありまして、どうにか支払っていたみたいです。「えっ!!」と声が出るほどビックリした。

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確かに政府を信用して戦争保険に入ったのに支払われなかったら、「日本国はダメだ。状況はやばいんだ」と考える人がたくさん出てきたら戦争どころじゃなくなるでしょうから、しっかりと支払ったのでしょうね。

・空襲の戦争保険で散財した国庫
https://www2.nhk.or.jp/archives/shogenarchives/bangumi/movie.cgi?das_id=D0001240248_00000https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q149008099


・1943年の100円は現在の 664.9/2.046*100= 324976円 yahoo知恵袋より
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q149008099

雑誌内に「空襲がそろそろ近いよ」という内容が散見

f:id:corsa2011:20200706150412j:plainハンドバッグとしても使える防空づきん

f:id:corsa2011:20200706150455j:plain敵機を発見して判別する方法

f:id:corsa2011:20200706150444j:plain空襲から赤ちゃんを守る方法

f:id:corsa2011:20200706151554j:plain焼夷弾はどこまで跳ぶのか

f:id:corsa2011:20200706151856j:plain防諜防空を生活のなかに

いずれも本土空襲が近いことを前提に書かれている記事です。月刊中日を読んでいる人は「そろそろ空襲がくるから準備しないと。実は戦争の状況がやばいのでは・・・」と考えていたのでは?これだけ警鐘していたらさすがに思いそうですよね。

まとめ

私は本を読む前に想像していた昭和18年は「戦争に負けることはないと考えていて、日本は常勝中!しかし本土への空襲はバンバンきている」と思い込んでいましたが、実際は大規模な空襲前であり、そろそろ空襲の準備を行っていこうか。といった状況だったことがわかりました。

最後にふと、戦時中にもかかわらず約束どおり戦争保険のお金を払ったんだから、今の平和なご時世も年金をきっちり払ってもらえるよね?と期待しつつ終わりにしたいと思います。

雑誌内の広告集

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